どこにでも、オフィスビルまたはレジデンシャルを作ればよいという時代は終わりました。もちろん、オフィスビル、レジデンシャルの建設にあった立地条件もありますが、時代の潮流に合せて、建築物も変えていく必要があります。現在であれば、行政からの助成金や政策融資を受け、高齢者向け住宅(サービス付高齢者住宅)を建設したり、地域社会貢献のためにクリニックモール、幼児施設を建設したり、物流倉庫やメガソーラーシステムを建設したりと、先入観に捉われずにシミュレーションを行い、事業計画を立てていくことが大切です。
賃貸オフィスビルを建築する場合、それを使ってくれる入居者のことを第一に考えなければなりません。賃料収入を少しでも増やそうとレンタブル比(賃貸する床面積の比率)を無理に引き上げたり、建築コストを削って空調能力を落したりすると危険です。不動産賃貸事業は長年に渡りテナント収入を得ることで、長期的に投下資金を回収していく事業です。テナントのニーズは年々厳しくなっており、テナントに選ばれる仕様、かつ将来の拡張性も考えた建物にする必要があります。
オフィスビルのライフサイクルコスト(=LCC※)における「維持・管理コスト」の割合は、約80%を占めるといわれています。維持・管理コストを抑制するため、各部材の耐用年数を考慮した上で、清掃しやすい部材を選択したり、徹底した省エネルギー化を推し進めることで水光熱費を節約したり、建物の長寿命化を図ることはもちろんのこと、更新やリニューアルを行いやすい設備仕様にするなど、建築の時から解体廃棄まで考えた企画・設計を行うことがかかせません。
また近年の環境配慮の観点からも、LCCのコントロールは重要なテーマのひとつであり、サステナブル(持続可能)な社会の実現のために、今まで以上に考えていく必要があります。